観光産業の経営的課題を学術的・実学的にアプローチ
2003年の観光立国宣言によって、観光は21世紀のリーディング産業として位置づけられ、国の成長戦略の大きな柱の一つとされました。そして、2007年に観光立国推進基本法が施行され、2008年に観光庁が設置されると、官民一体で観光振興に向けた取り組みが進められてきました。日本社会が人口減少、国内産業の空洞化、地方衰退という閉塞状況にあって、観光は地域経済の活性化や雇用の創出等に非常に大きな役割を果たすものと期待されています。しかし、諸外国との観光客誘致競争の激化、観光産業の低い生産性、観光振興による経済効果の地域間格差等、様々な課題を抱えています。
このような状況のなかで、観光立国をめぐる諸課題に取り組み、観光産業の国際競争力向上を担う観光経営マネジメント人材が求められています。日本では観光が社会的に注目を集める中、多くの大学で観光関連の学部・学科が相次いで新設されてきました。日本の観光関係高等教育機関では、人文・社会科学という既存の学問領域を土台にして、観光という現象を学ぶことが主流となっています。しかしながら、海外の観光関係高等教育機関では、観光を実学の面から捉え、その経営について学ぶことが主流となっており、観光経営マネジメント人材の育成において日本は諸外国に後れを取っています。
また、観光研究に関しても、海外では観光産業の経営的課題を学術的に研究するという実学的なアプロ―チが一般的であり、経営学を基礎としたアプローチ方法が主流となっています。これに対して、日本の観光研究は、社会学、文化人類学、地理学、経済学、経営学等、多様なアプローチ方法が混在しているのが実情です。それは観光研究の多様性を表現しているという一面があるものの、社会的ニーズという観点からみれば観光経営学のさらなる発展が必要となります。
日本観光経営学会は、観光経営に関する学術研究のみならず、ビジネスとアカデミックの接点を対象とし、それらの健全な発展に寄与することを目的としています。